第4回:リアルとオンラインをつなぐ“アプリの接点力”  

2025/07/31 15:00

顧客との接点は、今や店舗の中だけでは完結しません。
SNS、LINE、ECサイトなど、オンライン上のタッチポイントも含めて、「どこで・どうつながるか」が問われる時代です。

そうした中で注目されているのが、「OMO(Online Merges with Offline)」という考え方です。
オンラインとオフラインの境界をなくし、顧客にとって自然な体験を設計する。
この流れの中で、アプリが果たす役割も再定義されつつあります。


アプリは“入り口”ではなく“ハブ”になる  

これまでのアプリは、「スタンプカードの代わり」や「クーポン受け取りのためのもの」として使われてきました。
確かにその役割もありますが、今はそれだけでは不十分です。

アプリには「IDベースでつながり、ログを蓄積できる」という特性があります。
これはつまり、リアルの体験(来店、購買、接客)と、オンライン上の行動(通知の反応、ポイント履歴、ギフト交換など)を一元的に把握できる“接点のハブ”として機能するということです。

たとえば以下のような設計が可能になります。

・店舗でアプリ経由でQRコードを読み取るとスタンプが付与される
・アプリ経由でキャンペーンに参加した顧客の来店率を可視化
・店頭の案内からECにスムーズに誘導し、購入後はアプリでポイント付与

なお、LINEを拡張する外部ツールなどを活用すれば、こうした接点づくりをLINE上でもある程度実現することは可能です。
ただし、アプリであればこれらの機能を専用のプラットフォーム内で統合的に設計でき、ひとつの画面の中で“自分ごと”として自然に提供できる点に強みがあります。

オンラインとオフラインが分断されることなく、ひとつの線でつながっていく。
アプリは、こうした“なめらかな体験”を作る起点になります。


リアルでの利用動機を設計する  

ただアプリを提供するだけではなく、「いつ・どこで・なぜ使うのか」を設計することが重要です。

特にリアル店舗では、次のような“利用動機”を作ることで、アプリの起動率が大きく変わります。

・会計時に「アプリでポイントが付きます」と声かけ
・来店スタンプを押すためにアプリを立ち上げる
・来店後アンケートをアプリ経由で回答することでクーポンを配布
・店舗での抽選イベントやガチャなど、アプリ限定の企画を実施

アプリが「使わないと損」な存在になることで、自然とオンラインとの接点が日常に組み込まれていきます。

スマホをみてガッツポーズする女性


オンラインだけではできないことをアプリで強化する  

OMOは、単なるオンライン化ではありません。
むしろ、リアルな場での接点や体験を活かしながら、それをテクノロジーでつないでいくという考え方です。

アプリは、こうした“つなぐための橋渡し”として非常に有効です。

・顧客に会える場所がある
・その場で声かけができる
・顧客の行動をリアルタイムで感じられる

このような中小企業や店舗の“強み”を、アプリは最大限に引き出すことができます。
規模ではなく設計次第で、体験価値のある関係構築ができるのです。


アプリを接点の「通過点」ではなく「基点」にする  

多くのアプリは、通知を見て終わり、ポイントを見て終わりといった“通過点”としての使われ方にとどまっています。
しかし、本来アプリは“接点の基点”となる存在です。

通知を見たあと来店する
来店後にまたアプリを開いてクーポンを使う
使った体験を通じてまた次の施策へとつながる

このように、「つながりが循環していく設計」が、アプリの真価を発揮するポイントになります。


次回(第5回)では、こうしたアプリ活用を、コストや運用の面からも“現実的に”始める方法について掘り下げていきます。
中小企業や店舗が、今あるリソースの中で実現できるDXの第一歩として、どうアプリを取り入れていけるのかをご紹介します。