第1回:アプリはもう古い?──だからこそ見直したい“アプリ活用”の本質  

2025/07/20 14:45

「今さらアプリなんて、もう古いんじゃないか」
そんな声を聞くことが増えました。

確かに、LINEやSNS、ミニアプリといった手軽なツールが広がるなかで、アプリの存在感は以前より薄れたようにも感じられます。
一方で、「わざわざアプリをつくる意味はあるのか?」と疑問を持つ方が増えるのも、ある意味当然のことかもしれません。

ですが最近、実はあらためて“アプリ”に注目する企業や店舗がじわじわと増えているのをご存じでしょうか?
その背景には、「アプリを作ること」ではなく、「アプリをどう活かすか」という問い直しが始まっているからです。

 

アプリが「いらない」と思われる理由

企業がアプリ導入をためらう理由は明確です。
「インストールしても使われない」「開発コストがかかる」「運用が面倒そう」……
そういった不安を持つのは当然ですし、実際に“使われないまま終わったアプリ”も少なくありません。

一方で、LINEやSNSは通知性が高く、導入も簡単。
情報を届けるだけなら、アプリを持つ意味が見出しにくくなっているのも事実です。
こうした背景から、「今さらアプリなんて必要ない」と考える流れは自然なものと言えるでしょう。


それでも“アプリ”が選ばれる理由

それでもあえてアプリを選ぶ店舗や企業があるのは、“アプリだからできること”に価値を感じているからです。

アプリは、ユーザーをIDで管理できる「会員制」のプラットフォームです。
そのため、来店履歴やポイント利用、クーポンの取得など、個別の行動データが蓄積されていきます。

このような情報をもとに、一人ひとりに合った施策を打ったり、関係性の深い顧客に特別な体験を提供したりといった“個別最適化”が可能になります。

また、LINEでも会員証やポイント残高の表示は拡張機能を活用すれば実現可能ですが、個別データの表示や更新には一定の開発や外部システムとの連携が必要となり、標準的な運用だけでは難しいケースも多くあります。

一方、アプリであれば、起動時に「自分だけの会員証」や「最新のポイント残高」などが自然に表示され、情報の更新や通知ともシームレスに連動できます。

こうした、パーソナライズされた情報を“当たり前のように継続的に届けられる環境”が整っていることが、アプリならではの強みと言えます。

アプリで喜ぶ女性

LINEとアプリは、役割が違う

「うちはLINEを活用しているからアプリは必要ない」
そう考える方も多いですが、LINEとアプリは本来、競合関係ではなく補完関係です。

  • LINEは、最初の接点づくりやライトな通知に強い

  • アプリは、継続的な関係の管理や深い情報のやりとりに向いている

LINEでつながったお客様にアプリを使ってもらうことで、よりパーソナルな関係構築やCRM的な顧客管理が可能になります。
つまり、アプリは「顧客との次のステージをつくる接点」だと考えると、その価値が見えてきます。

 

“つくる”から“育てる”へ。アプリは戦略設計の起点になる

アプリが再評価されている今、必要なのは「つくるかどうか」ではなく、「どのように活用し、育てるか」という視点です。
アプリを単体で語るのではなく、顧客接点をどう設計し、どう育んでいくか

そこにOMOやCRMの考え方がつながってきます。

この連載では、アプリを起点に、店舗や中小企業が無理なく始められる「顧客接点の再設計」について、具体的なヒントをお届けしていきます。

 

次回は、「“選ばれるアプリ”と“使われないアプリ”の違い」について考えます。
アプリが定着しない理由と、使い続けてもらうための工夫をひもといていきましょう。