
「LINEさえあれば、もう十分なのでは?」
そんな声をよく耳にします。
実際、LINEは多くの企業や店舗にとって、顧客とつながるための“最初の一歩”として非常に有効です。
一斉配信、クーポン配布、簡単なチャット対応など、多くのことができる便利なツールであることは間違いありません。
ですが、LINEでできるのは「つながること」まで。
「理解すること」に踏み込もうとしたとき、その先の道筋が見えにくくなることがあります。
つながっていることと、わかっていることは違う
たとえば、LINEでつながっている1万人のうち、
・週に1回来店しているのは誰なのか
・クーポンをよく使ってくれる人はどれくらいいるのか
・ポイントが貯まったまま動きのない人は誰か
・最終来店から90日以上経過しているのはどの層か
こうした問いにすぐ答えられるでしょうか?
LINEでは「メッセージを送ること」はできますが、標準機能の範囲では、個々の行動履歴や傾向を体系的に蓄積・分析するには限界があります。
拡張ツールを活用すれば、ある程度の個別対応や行動データの収集も可能にはなりますが、設計や連携の負荷はそれなりにかかります。
アプリとCRMがもたらす「行動の見える化」
アプリを活用すれば、「誰が、いつ、どこで、何をしたか」といった行動データを自然に蓄積し、それをCRMと連携させることで一人ひとりの顧客像が見えてきます。
・来店日時や頻度
・ポイントの獲得・利用履歴
・クーポンの取得・使用タイミング
・商品カテゴリごとの関心傾向
・アプリ内での操作やタップ履歴
このような情報は、単なる「トークの反応」だけでは見えてこない、顧客の関心や行動の蓄積です。
それを基にした分析やアプローチにより、「誰に、いつ、何を届けるべきか」の精度が大きく変わります。
見える化がマーケティングを変える
顧客の行動が見えるようになると、打ち手の内容も変わってきます。
・離脱しそうな顧客に、来店促進の特別クーポンを配信
・誕生日と来店頻度の多い顧客に、限定特典を案内
・ポイントが失効しそうな顧客に、リマインド通知で再訪を促す
こうした「的を絞ったアクション」は、無駄打ちを減らし、効果の高い施策へとつながります。
さらに、「自分のことを見てくれている」という実感が、顧客のロイヤルティを高める要因にもなります。
データは活用してこそ価値がある
アプリやCRMがあるだけでは意味がありません。
「何を見たいのか」「どう使いたいのか」という設計があって初めて、データは顧客との関係を深める力になります。
次回(第4回)では、そうしたアプリを通じてリアルとオンラインをなめらかにつなぐ、OMO的な顧客接点の設計について、より具体的に掘り下げていきます。