Zoho CRMで考える「AI」の役割 ①

2026/07/26 21:52

AIでできることと、AIに任せるべきことは違う

最近、「AIを活用して営業を効率化したい」というご相談をいただく機会が増えています。

その中で私たちが感じるのは、多くの企業で「AIでできること」と「AIに任せるべきこと」が混同されているということです。

例えば、「提案漏れを防ぎたい」「営業担当へ今日やるべきことを表示したい」「一定期間フォローしていない顧客を見つけたい」といったご相談をいただくことがあります。

すると、多くの場合、「これらはAIを使えば実現できますか」というご質問をいただきます。


もちろんAIでも実現できます。

しかし、ここで重要なのは、AIで実現できることと、AIで実現すべきことは必ずしも一致しないという点です。

Zoho CRMにはワークフローやブループリント、ダッシュボード、キャンバスといった機能があり、それぞれが異なる役割を持っています。

AIが登場したからといって、それらが不要になるわけではありません。

むしろAI時代だからこそ、それぞれの役割を理解し、適材適所で使い分けることが重要だと私たちは考えています。


AIはWorkflowの上位互換ではない

AIという言葉が広まるにつれ、「何でもAIで実現しよう」という考え方も増えてきました。

しかし私たちは、AIはワークフローの上位互換ではないと考えています。

例えば、提案から30日経過したら担当者へ通知する、提案書を添付しなければ次の営業ステージへ進めない、今日対応すべき案件を一覧表示するといった業務は、すべてルールが明確です。

このような仕事は、ワークフローやブループリント、ダッシュボード、キャンバスの方が適しています。

毎回同じ条件で、同じ結果を返すことが求められるからです。


AIは、その都度考えます。

一方でワークフローは、決められたルールを確実に実行します。

一見するとAIの方が高機能に見えるかもしれませんが、業務システムでは「毎回同じ結果になること」が重要な場面も少なくありません。

だからこそ、ルールで処理できるものはルールに任せる。

この考え方はAI時代になっても変わらないと思っています。


AIに期待し過ぎると設計が複雑になる

実際のお打ち合わせでも、この違いを感じることがあります。

「営業担当へ今日やるべきことをAIが教えてくれるようにしたい。」

そう聞くと、高度なAIが必要なように思えます。

ところが詳しくお話を伺うと、本当に実現したいのは、今日フォローすべき顧客を確認したい、期限が近い見積を見落としたくない、しばらく連絡していない顧客を把握したい、契約更新が近づいている取引先を忘れないようにしたい、といった内容であることが少なくありません。

これらは、あらかじめ条件を決められる業務です。

そのため、AIへ判断を任せるよりも、ワークフローでタスクを作成し、ダッシュボードやキャンバスへ表示した方が、処理は速く、結果も安定し、運用もしやすくなります。

もちろんAIにも同じことはできます。

しかし、できることと、任せるべきことは違います。

私たちはAIを導入するときほど、「これは本当にAIが考えるべき仕事なのか」と立ち止まって考えることが重要だと思っています。

AIは便利な道具です。

だからこそ、何でもAIへ置き換えるのではなく、それぞれの役割を見極めることが、AI時代のCRM設計では欠かせないと考えています。



AIが得意なのは「考えること」

では、AIはどのような場面で力を発揮するのでしょうか。

私たちは、「正解が一つではない仕事」こそAIの出番だと考えています。

例えば、この顧客には次に何を提案すべきか、この商談は失注リスクが高いのではないか、あるいは過去の成功事例を見ると別の商品も提案した方が良いのではないか、といった問いには明確な答えがありません。

判断するためには、顧客情報だけでなく、商談履歴や活動履歴、過去の受注状況、メールのやり取りなど、さまざまな情報を総合的に見る必要があります。

ワークフローは決められたルールを実行することは得意ですが、「考えること」はできません。


一方でAIは、大量の情報を整理し、人では気付きにくい傾向や関連性を見つけ出し、新しい視点や可能性を示してくれます。

もちろん、その提案が常に正しいとは限りません。

最終的に判断するのは人です。

しかし、人だけでは見落としてしまうかもしれない視点を提示してくれることに、AIの大きな価値があります。

だからこそ、私たちはAIを「ルールを実行するための仕組み」ではなく、「人の判断を支援するための存在」として活用すべきだと考えています。


私たちが考える「営業コックピット」

私たちは最近、お客様へ「営業コックピット」という考え方をご提案することがあります。

CRMは顧客情報を登録する場所ではありません。

営業担当が朝CRMを開いた瞬間に、「今日は何をすれば良いのか」が自然に分かる状態を作ることが重要です。

例えば、今日訪問予定の顧客、しばらく動きが止まっている商談、期限が近づいている見積、更新時期を迎える契約などが、自動的に目に入るようになっていれば、営業担当は迷うことなく行動できます。

ここまでは、ワークフローやブループリント、ダッシュボード、キャンバスが担う役割です。

そして、その上でAIが、「この顧客にはクラウドサービスも合わせて提案した方が良い」「同じ業種では、このタイミングで保守契約の受注率が高い」といった、人では気付きにくい示唆を与えてくれます。

つまり営業コックピットとは、システムが営業担当の行動を支え、AIが判断を支え、人が最終的な意思決定を行う仕組みだと言えるでしょう。

私たちは、このようにそれぞれが得意な役割を分担してこそ、CRMは営業担当にとって本当に価値のある「コックピット」になると考えています。


AIエージェントは「役割」を持ったAI

では、最近よく耳にするAIエージェントは何が違うのでしょうか。

私たちも最初は、「AIエージェントとは、自律的に動くAIなのだろう」と考えていました。

しかし、ZohoのAgent Studioを実際に触ってみると、AIエージェントの本質は別のところにあると感じました。

AIエージェントの本質は、「役割」を持つことではないでしょうか。

会社には営業担当、経理担当、サポート担当、人事担当など、それぞれの役割があります。

営業担当へ経理業務を任せることはありませんし、経理担当が営業活動を行うこともありません。

それぞれが必要な知識を持ち、必要なシステムを使い、自分の役割を果たしています。


AIエージェントも同じです。

営業Agentは営業活動を支援するためのInstructionsやKnowledgeを持ち、営業に必要なツールだけを利用します。

サポートAgentは問い合わせ対応に必要な知識やルールを持ち、サポート業務を担当します。

つまりAIエージェントとは、「何でもできるAI」ではありません。組織の中で、一つの役割を継続して担うAIなのです。


ClaudeやChatGPTでも同じことはできるのでは?

ここで疑問を持たれる方もいるかもしれません。

「ClaudeやChatGPTに営業担当として提案を考えてくださいと依頼すれば同じではないか。」
実際、その通りです。
ClaudeやChatGPTのようなLLMがZoho MCPなどを通じてCRMへ接続されていれば、営業担当として顧客を分析し、提案内容をまとめることもできます。

では、両者の違いはどこにあるのでしょうか。


それは「一度きりの指示」なのか、「組織に定着した役割」なのか、という点です。
LLMへの依頼は、毎回プロンプトとして役割や条件を伝え直す必要があります。会話が終われば、その役割設定は基本的にリセットされます。
一方でAgent Studioでは、「営業Agent」という役割そのものを組織へ配置します。
Instructionsで行動方針を定め、Knowledgeで必要な知識を与え、Toolsで利用できる機能を決め、Guardrailsで守るべきルールを設定する。

これらは一度構築すれば保存され、誰が呼び出しても同じ役割・同じ基準で機能し続けます。

つまりAgent Studioは、AIの性能を引き上げる場所ではありません。
AIへ役割を与え、組織の一員として働き続けてもらうための場所なのです。
ここに私たちは、Zohoらしい設計思想を感じました。


AI時代に必要なのは役割分担

私たちは、これからのCRMは次のような役割分担で設計されていくべきだと考えています。



重要なのは、「どの機能が優れているか」を比較することではありません。

それぞれが得意な仕事を理解し、適切に役割を分担することです。


おわりに

AIという言葉が広がるにつれ、「AIを導入すれば営業が変わる」と期待される場面も増えてきました。

しかし私たちは、本当に重要なのはAIそのものではなく、「何をAIへ任せ、何をシステムへ任せ、何を人が判断するのか」という設計だと考えています。

ワークフローにはワークフローの役割があります。

ブループリントにはブループリントの役割があります。

AIにはAIの役割があります。

そしてAIエージェントには、営業担当やサポート担当のように、継続して役割を担うという役割があります。


Zoho CRMを触っていて感じるのは、Zohoは単にAI機能を追加しているのではなく、人・システム・AIが協働するための仕組みを少しずつ形にしているということです。

AI時代のCRMとは、「AIを導入したCRM」ではありません。

人とシステムとAIが、それぞれの強みを理解し、それぞれの役割を果たしながら協働するCRM。

私たちは、そのような姿が、これからのCRMの一つの理想形になっていくのではないかと考えています。

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ここまで、ワークフロー、AI、AIエージェントにはそれぞれ異なる役割があり、「AIでできること」と「AIに任せるべきこと」は同じではないという考え方をご紹介してきました。

では、その役割分担を実際の営業現場へ落とし込むと、CRMはどのような姿になるのでしょうか。

私たちは最近、お客様との打ち合わせの中で「営業コックピット」という考え方をご提案することがあります。

CRMを単に顧客情報や商談を入力するためのシステムとしてではなく、営業担当が朝CRMを開いた瞬間に「今日は何をすべきか」が分かり、システムが行動を支え、AIが判断を支援する場所へ変えていくという考え方です。

次回は、「営業コックピットという考え方」をテーマに、なぜCRMが入力するだけのシステムになってしまうのか、営業担当に本当に必要な情報とは何か、そしてAIをどこで活用すべきなのかを、営業現場の視点から考えていきます。




株式会社ワックアップについて


ワックアップは、横浜・沖縄を拠点に、中小企業・店舗のデジタル化を支援するDXソリューションカンパニーです。

特に沖縄地域においては、クラウド活用や情報共有基盤の整備、顧客データ活用など、地域企業に寄り添ったDX支援にも積極的に取り組んでいます。

ポイント統合・交換サービス「Point Hub」、会員アプリ「ワックアプリ」、LINE公式アカウント連携サービス「LINE Hub」、など、顧客とのつながりを深める独自のサービスを提供しています。

また、Zoho公式パートナーとして、CRM(顧客管理)やマーケティングオートメーションを中心とした「Zoho導入・運用支援」も行い、企業の業務効率化や情報基盤整備、データ活用をサポートしています。

地域企業に寄り添いながら、“現場に定着するDX”を支援しています。




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